体内の情報伝達の大半を担う組織として、神経細胞(神経線維)が連なった神経系があります。
身体の個々の組織は刺激によって反射的に動くことが出来るが、実際の人間の身体は個々の部位が単独で動いているものではなく総合的に制御されていて、このような制御する部分を中枢と言います。この中枢によって制御される部分を末梢と呼びます。
中枢は、末梢からの刺激を受け取って統合し、それらに反応して興奮を起こし、末梢へ刺激を送りだすことで、末梢での動きを発生させ、人間の身体を制御しています。
脳と脊髄から構成されます。
脳は、頭の上部から下後方部にあり、記憶・情動・意思決定の働きを行っています。脳の下部には、自律神経系、ホルモン分泌等の様々な調節機能を担っている部位があります。
脳の重さは体重の約5%で、血液の循環量は心拍出量の約15%、酸素の消費量は全身の20%、ブドウ糖の消費量は全身の約25%となっています。
脳と脊髄は、延髄(後頭部と頸部の境目に位置する)でつながっています。延髄には、心拍数を調節する心臓中枢・呼吸を調節する呼吸中枢があります。
脊髄は、脊椎の中にあり、脳と末梢の間で刺激を伝えるほか、末梢からの刺激の一部に対して脳を介さずに刺激を返す場合があり、これを脊髄反射と言います。
脳や脊髄から体の各部位へ伸びている末梢神経系は、随意運動・知覚等を担う体性神経系と、呼吸や血液等、無意識に働く自律神経系に分かれます。
自律神経系は、交感神経系と副交感神経系からなります。交感神経系は体が闘争や恐怖等の緊張状態に対応した働き、副交感神経系は食事や休息等の安息状態となるように働きます。
交感神経系の神経伝達物質は、アドレナリンとノルアドレナリン。副交感神経系は、アセチルコリンです。例外として汗腺を支配する交感神経線維の末端では、アセチルコリンが伝達物質として放出されます。
効果器 | 交感神経系 | 副交感神経系 | |
---|---|---|---|
■ | 目 | 瞳孔散大 | 瞳孔収縮 |
■ | 唾液腺 | 少量の粘性の高い唾液を分泌 | 唾液分泌亢進 |
■ | 心臓 | 心拍数増加 | 心拍数減少 |
■ | 末梢血管 | 収縮・血圧上昇 | 拡張・血圧降下 |
■ | 気管・気管支 | 拡張 | 狭窄 |
■ | 胃 | 血管の収縮 | 胃液分泌亢進 |
■ | 腸 | 運動低下 | 運動亢進 |
■ | 肝臓 | グリコーゲンの分解(ブドウ糖放出) | グリコーゲンの合成 |
■ | 皮膚 | 立毛筋収縮 | --- |
■ | 汗腺 | 発汗亢進 | --- |
■ | 膀胱 | 排尿筋の弛緩(排尿抑制) | 排尿筋の収縮(排尿促進) |
交感神経系と副交感神経系は、互いに拮抗して働くのが特徴です。一方が活発になっているときは、片方は活動を抑制して効果器を制御しています。