飲食物を消化して、生命維持に必要な栄養分を吸収して、その残滓を体外に排出する器官系です。
口腔から肛門までの消化管は、平均的な成人で全長約9mもあります。
飲食物はそのままの形では、栄養分として利用できないので消化管で吸収される形に分解する必要があります。これを消化と言います。
消化には、消化腺から分泌される消化液による化学的消化と、咀嚼(飲食物を噛み、粉砕すること)や消化管の運動による機械的消化の2種類があります。
■ | 消化管 | 口腔・咽頭・食道・胃・小腸・大腸・肛門 |
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■ | 消化腺 | 唾液腺・肝臓・胆のう・膵臓 |
口腔は口の中のことで、歯・唾液腺・舌に分けられます。
歯は、歯周組織(歯肉・歯根膜・歯槽骨・セメント質)によって上下の顎の骨に固定されています。
歯槽骨の中に埋没している部分を歯根、歯頚を境に口腔に露出している部分を歯冠と言います。
歯冠の表面はエナメル質で覆われ、人間の体の中で最も固い部分となっています。エナメル質には象牙質という骨状の組織があり、神経や血管が通る歯髄を取り囲んでいます。
歯のう蝕(虫歯のこと)が象牙質まで達すると神経が刺激されて、歯がしみたり痛んだりします。
舌の表面には、舌乳頭という無数の突起があり、味覚を感知する部位の味蕾が分布しています。
舌には、味覚を感知・咀嚼した飲食物を唾液と攪拌して混和させる働きがあります。ちなみに、甘さを感じるのは舌の先端で、苦味は舌の奥が敏感です。
唾液を分泌して、飲食物を噛み砕きやすくし、咀嚼物を滑らかにして飲み込みを容易にします。
唾液には、デンプンをデキストリンや麦芽糖に分解する消化酵素(プチアリン・唾液アミラーゼ)が含まれています。 その他、リゾチーム等の殺菌・抗菌物質も含んでいて、口腔内の保護や洗浄、殺菌の作用もあります。
口腔内は唾液によってpHがほぼ中性に保たれ、酸による虫歯を防いでいます。
咽頭は、食道に通じる食物路と、呼吸器の気道が交わるところのことです。食べ物を飲み込むときに、咽頭の入口にある弁(喉頭蓋)が反射的に閉じられ、食べ物が咽頭や気管に入らず食道へと送られます。
食道は、喉元から上腹部のみぞおち近くまで続く直径1~2cmの管状の器官です。消化液の分泌腺はありません。食べ物は重力で胃に落ちるのではなく、食道の運動によって胃に送られます。
上腹部にある中空の臓器で、中身が空の状態では扁平に縮んでいます。食べ物が送られてくると胃壁の平滑筋が弛緩して容積が拡がります 胃が拡がることを胃適応性弛緩と言います。
胃の内壁は粘膜で覆われて多くのひだがあります。胃液には、蛋白質を消化する酵素であるペプシンと塩酸(胃酸)が含まれます。蛋白質がペプシンによって半消化された状態をペプトンと言います。胃酸は、胃内を強酸性に保って内容物が腐敗や発酵を起こさないようにする役目を果たしています。
その他、胃粘液に含まれる成分は、小腸におけるビタミンB12の吸収にも重要な役割があります。
食べた物は、胃の運動によって胃液と混和されて、数時間は胃内に滞留します。脂質分の多いものより炭水化物の食べ物の方が長く滞留します。
全長6~7mの管状の臓器で、十二指腸・空腸・回腸の3部分に分かれます。
十二指腸は、胃からつながる約25cmのC字型をした腸で、彎曲した部分には、膵臓からの膵臓管と胆のうからの胆管の開口部があり、それぞれ膵液と胆汁を腸内管へ送り込んでいます。
腸の内壁からは、腸液が分泌され、腸液に含まれる成分の働きによって、膵液中のトリプシノーゲンがトリプシンになります。トリプシンは、ペプトンをさらに細かく消化するための酵素です。
十二指腸以外の上部2/5が空腸、残り3/5が回腸と言われています。
空腸で分泌される腸液に、腸管粘膜上の消化酵素(ペプトンをアミノ酸まで分解するエレプシン、炭水化物を単糖類のガラクトースやブドウ糖にまで分解するマルターゼ、ラクターゼ等)が加わり、消化液として働きます。
小腸は、栄養分の吸収に重要な器官で、十二指腸の上部以外には輪状のひだ(絨毛)があり、内壁の表面積を大きくして吸収を高めています