外界における種々の現象を刺激として、脳に伝えるための器官です。
可視光線を感じる視覚器(目)・空気中を漂う物質の刺激を感じる嗅覚器(鼻)・音を感じる聴覚器(耳)等、それぞれの感覚器は、その対象とする特定の感覚情報を捉えるため独自の機能を持っていて、別の器官ではそれらを感じ取れません。
視覚情報の受容器官で、明暗・色・物体の位置・時間的な変化(動き)を感じ取る眼球と、眼瞼・結膜・涙器・眼筋等からなります。顔面の左右に1対あり、物体の遠近感を認識することができます。
■眼球
頭蓋骨のくぼみ(眼窩)に収まっている球形の器官です。
角膜は、紫外線に長時間曝されると、角膜の上皮に損傷を生じることがあります(雪目のこと)ので注意して下さい。
視細胞には、色を識別する細胞と、わずかな光でも敏感に反応する細胞の2種類があります。
■眼瞼
眼球の前面を覆う薄い皮膚のひだで、物理的・化学的刺激から目を保護したり、まぶしいときに光の量を調節したり、まばたきによって目の表面を涙液で潤して清潔に保つ機能があります。
眼瞼は、むくみ等の全身的な体調不良の症状が現れやすい部位です。
■結膜
眼瞼の裏側と眼球前方の強膜(白目の部分)とを結ぶように覆って組織を保護している薄い透明な膜です。
■涙器
涙液を分泌する涙腺と、涙液を鼻腔に導く涙道からなります。涙腺は上眼瞼の裏側にある分泌腺で、血漿から涙液を産生します。
■眼筋
眼球を上下左右斜めの各方向に向けるために、6本の眼筋が眼球側面の強膜につながっています。眼球の動きが少なく、同じ位置に長時間支持していると眼筋が疲労します。
生理的な目の疲れではなく、メガネやコンタクトが合わない・神経性の疲労・睡眠不足・栄養不良などが要因となる慢性的な目の疲れに肩こり・頭痛等の全身症状を伴う場合を眼精疲労と言います。
嗅覚情報の受容器官で空気中を漂う物質を鼻腔内に吸いこみ、化学的刺激を感じ取ります。食品からの嗅覚情報は、舌が受容した味覚情報と脳において統合され、風味として認識されます。
■鼻腔
鼻腔上部の粘膜にある特殊な神経細胞(嗅細胞)を、においの元となる物質の分子が刺激すると、その刺激が脳の嗅覚中枢へ伝えられます。
鼻腔は、薄い板状の軟骨と骨でできた鼻中隔によって左右に仕切られています。鼻中隔の前部は、毛細血管が豊富に分布していることに加えて粘膜が薄いため、傷付きやすく鼻出血を起こしやすいです。 鼻腔の粘膜に炎症を起こして腫れた状態を鼻炎といい、鼻汁過多や鼻閉(鼻づまり)などの症状を生じる。
■副鼻腔
鼻の周囲の骨内には、骨の強さや形を保ちつつ重量を軽くするため、鼻腔に隣接した目と目の間、額部分、頬の下、鼻腔の奥に空洞があり、それらを総称して副鼻腔と言います。いずれも鼻腔と細い管でつながっています。
聴覚情報と平衡感覚を感知する器官で、外耳・中耳・内耳からなります。側頭部の左右両側に1対あり、音の立体感を認識することができます。
■外耳
側頭部から突出した耳介と、耳介で集められた音を鼓膜まで伝達する外耳道からなる軟骨組織が皮膚で覆われたもので、外耳道の軟骨部に連なっています。
外耳道にある耳垢腺や皮脂腺からの分泌物に、埃や外耳道上皮の老廃物などが混じって耳垢となります。
■中耳
外耳と内耳をつなぐ部分で、鼓膜・鼓室・耳小骨・耳管からなります。
外耳道から伝わってきた音は、鼓膜を振動させます。鼓室の内部では、互いに連結した微細な3つの耳小骨が鼓膜の振動を増幅して、内耳へ伝導します。
鼓室は、耳管という管で、鼻腔や咽頭と通じています。急な気圧変化のため鼓膜の内外に気圧差が生じると、耳がつまったような痛みを感じますが、顎を動かすなどの耳抜き動作によって意識的に耳管を開けると気圧の均衡が戻って回復します。また、小さな子供では、耳管が細くて水平に近く、鼻腔からウイルスや細菌の感染が起こりやすいです。
■内耳
聴覚器官である蝸牛と、平衡器官である前庭の2つの部分からなり、内部を満たしているリンパ液の動きが刺激となって伝わります。
蝸牛は、渦巻き形をした器官で、内部はリンパ液で満たされ、中耳の耳小骨から伝わる振動がリンパ液を震わせ、その振動が聴細胞の小突起(感覚毛)を揺らして、聴神経が刺激されます。
前庭は、水平・垂直方向の加速度を感知する部分(耳石器官)と、体の回転や傾きを感知する部分(半規管)に分けられます。内部はリンパ液で満たされ、リンパ液の動きが平衡感覚として感知されます。
乗り物酔いは、反復される加速度刺激や動揺によって、平衡感覚が混乱して生じます。